受験うつの症例:医学部志望、高校3年生

光文社新書「受験うつ」第1章より


・・・・A君は有名進学校の高校3年生で、医学部を志望しています。

 

もともとは学校の文化祭の委員を務めるなど活動的な性格で、成績も学年全体で上位に入り、

普通に勉強を続ければ地方の国公立の医学部なら合格圏に達してもおかしくない優秀な生徒でした。

 

 

ところが、受験勉強を本格的に始めるとイライラして焦燥感を募らせたり、ふさぎ込んだりするといったうつ症状が現れるようになりました。

 

また、集中力が持続できず、机に向かってもほんの10分ほどで内容が頭に入らなくなり、勉強を投げ出してしまいます。

 

 

特徴は、勉強しようとしたときだけ、あるいは学校に行こうとしたときだけうつの症状が出ることです。

 

やがてA君は高校へ通学できなくなり、完全な不登校の状態に陥るのですが、

スポーツやレースの観戦が大好きで、サッカー日本代表の試合やF1のレースが開催されると、「受験勉強ができるようになるには、気分転換が必要だ」といって元気に出かけていきます。

 

また、深夜に放送されている海外のスポーツ中継を見ているときは、「行け!」「良し!」「いいぞ!」と歓声をあげながら、楽しそうに観戦しているそうです。

 

その結果、眠るのは明け方になるため、学校の登校時間に母親が起こそうとしても起床せず、午後2時ぐらいに目を覚ますような生活を続けていました。

 

 

あなたは、そんなA君をどう思いますか。

 

おそらく、ワガママな子どもで勉強サボっているだけだと思われた方が多いでしょう。

 

確かに、そういう側面は間違いなくあります。

 

しかし、単なるサボりだと決めつけられない症状も出ているのです。

 

無理に学校に行こうとすると吐き気を催し、実際に嘔吐することもたびたびあったそうです。

 

また、勉強しようとすると、めまいが起こり、ひどい時は、呼吸困難になることもあります。

 

あなたは仮病だと思われたかも知れませんが、 A君の父親は現役の医師で、そうではないことが父親の診断で確認できています。

 

 

また、A君の脳機能の状態を検査したところ、

瑣末な情報にとらわれて文章の大意が読み取れなくなっている、

集中力にムラがあり粘り強く考える能力が極端に低下しているなと、

単なるワガママでは済ませられない、うつ症状に特有に見られる認知機能の異常が生じていることも判明しました。

 

 

A君が勉強しないのは、確かにサボっているという側面もあるにはあるのですが、

勉強をしようと思ってもできなくなっているのは事実なのです。

 

気分の問題はご家族にもわかりやすいのですが、受験うつになると脳の認知機能の低下も生じす。

 

これが見落とされがちな受験うつが抱える大きな落とし穴なのです。

うことになるわけです。・・・

 

 

光文社新書「受験うつ」第1章より

 



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<目次>
第1章 増える受験うつ
第2章「受験うつ」のメカニズム
第3章 受験うつは答案用紙に表れる
第4章 間違いだらけの治療法
第5章 親のひと言が子どもを受験うつにする
第6章 うつにならない勉強法
第7章 親のコーチングで結果は出せる

 

<内容紹介>
未成年のうつ病、しかも、ストレスが増える受験期に突然発症する人が急増している。


子どもと大人では症状が大きく異なるため、親も受験生本人も発症に気が付かないケースが多いのが実情である。


中学受験ではもちろんのこと、高校受験や大学受験で頻発しており、受験生専門外来の私のクリニックにも、勉強が手につかなくなった多くの受験生が来院している。


受験期のうつで人生を狂わさないために、受験生本人が、家族ができることは何か?


また、脳機能から考えたストレス管理や効率の良い勉強法もまとめた、うつ病の有無を問わず受験を控えたすべての方に必見の書。

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