コラム「自己愛で身を滅ぼす人…成功する人…」
私の著書の中から、自己愛についてのコラムをご紹介します。
受験生が自己愛と向き合っていく上で、参考になると思います。
タイトル:「20代リアル処世術」
著者:吉田たかよし
出版社:PHP研究所
定価:1000円(税別)
現在の20代の方にみられる心理面の特徴について、多くの心療内科医や精神科医が指摘していることがあります。
それは、自己愛がとても強い人が多いということです。
自己愛とは、簡単に言うと、関心や注意が自分自身だけに向かうことです。
自分自身が特別な存在だと考え、他人のことには興味を感じられず、周囲の人を自分に何をしてくれるのかという基準だけで見てしまいます。
こうした自己愛が暴走すると、自分の自尊心を守ることに執着するあまり、他人を必要以上に攻撃してしまいがちです。
また、無意識のうちに周りの人を見下してしまうので、心を許しあえる友人ができません。
自己愛の暴走は、病気につながる場合があることも分かっています。
「こうなったのは会社が悪い」「こうなったのは親が悪い」などと他人の責任を追求する気持ちにとらわれ、うつ症状に陥ることもあるのです。
これは、従来からあるうつ病とは明らかに病気の種類が違うので、「新型うつ」と呼ばれています。
20代を中心に「新型うつ」は、今、急激に増加していると警鐘を鳴らしている医師もいます。
このようなことを指摘すると、読者の方は、「なんだか説教臭い話が始まったな」と感じられたかもしれません。
しかし、私はお説教するつもりはまったくありません。なぜなら、私自身も自己愛がものすごく強いタイプだからです。20代の方に説教ができる立場ではなく、むしろ仲間としてアドバイスをしたいというのが私の気持ちです。
私が自己愛の強いタイプであることに初めて気づいたのは、医学部の6年生の時でした。
精神科の臨床実習の現場で指導教官から指摘を受けました。
確かに教科書に書かれていた自己愛が強い性格の特徴が見事なまでに当てはまっていて、自分でも驚きました。
では、私は職場で自己愛に特有のトラブルを次々と起こしているのでしょうか。あるいは、自己愛が原因で起こる新型うつ病になってしまったのでしょうか。
どちらも、答えはノーです。
それどころか、現在の私の仕事は、むしろ自己愛で支えられているといってもいいぐらいです。
読者の方には正直に打ち明けますが、私自身は自分のことを特別な才能を持った存在だと子供の頃から信じ込んでいました。
今から思うと、ほとんど根拠はなかったのですが、こうした思い込みがあったからこそ、勉強や仕事に人並み以上に頑張ることができました。
また、放送や政治、医学など人生を変えるようなチャレンジができたのも、自己愛が強かったためです。
私にとって自己愛は、人生を積極的に生きるための原動力みたいなものでした。
ただし現実には、自己愛の暴走によって、人生の階段を踏み外す人が多いのも確かです。
そんな方と、少なくとも今のところは自己愛がうまく利用できている私とは、根本的に違うことがあります。
それは、自覚です。私は自己愛が強いことをはっきりと自覚し、その問題点が表面化しないように、細心の注意を払っているのです。
たとえば、テレビ番組に出演するときは、自分自身が視聴者や他の出演者からどのように見られているか、いつも心の片隅に置くようにしています。
もし、ほんの一瞬でもこうしたチェックを怠れば、自己愛の強い私は、「吉田たかよしワンマンショー」にしようとしてしまいます。
これでは、番組はぶち壊しです。
かといって、露出が少なければ自分自身も満足できないし、わざわざ私を起用してくれた制作スタッフの期待にも答えられません。
そこで、番組で許される露出のギリギリの線をいつも狙っています。
こうした戦略がうまく機能しているので、芸能人でもないのに、いまだに番組に出演させていただいているのです。
ちなみに、売れっ子の芸能人は、ほぼ例外なく自己愛が強いタイプの性格です。
だから、自己愛が対立することで芸能人同士が犬猿の仲になったり、おだてられて詐欺の被害にあったりするのです。
しかし、自己愛が弱ければ、そもそも人前に身をさらしたいという強い願望も生じなかったので、芸能人として成功することはなかったでしょう。
一方、一代で企業を育て上げた偉大な経営者も、ほとんどが自己愛の強い方です。
だから、凡人なら尻込みするような戦略でも、迷うことなく突き進めるわけです。
このように考えると、自己愛は、欠点どころか成功を手にするための大切な資源だといえます。
大切なのは、自己愛を暴走させず、上手に使いこなすことです。
20代の方は、まずは自分自身を見つめ直し、自己愛が強いタイプかどうかをチェックしてください。
タイトル:「20代リアル処世術」
著者:吉田たかよし
出版社:PHP研究所
定価:1000円(税別)
初診カウンセリング料 18,000円 (90分 完全予約制)
「受験生に対するカウンセリング」、または「親子に対するカウンセリング」が基本ですが、
ご希望により「親のみのカウンセリング」も行っています。
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