✓ 受験生に特有の「強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)」が蔓延し、思わぬ入試失敗の原因になっています!
✓ 試験中、できない問題に執着しすぎて時間が足りなくなった経験のある受験生は要注意です。この場合、脳内の眼窩前頭皮質(Orbitofrontal cortex)の活動に問題が生じている可能性があります!
✓ 模擬テストの答案用紙をセルフチェックすることによって「受験強迫性障害」を見つけ出す方法を解説します!
✓ 英語の構文を細かく考えすぎて、長文全体の意味がつかみ取れなかった場合も、眼窩前頭皮質の活動が関与している可能性があります!
✓ 受験に特化した「暴露反応妨害法」など、最新の脳医学を応用した対処法で入試の得点が大幅にアップします!
「試験中に一つの問題に異常に執着しすぎて、時間が足りなくなってしまった・・・」
「英語の構文を細かく考えすぎて、長文全体の意味がサッパリつかみ取れなかった・・・」
「数学の計算が不安で何度も検算を繰り返し、次の問題に進めなくなった・・・」
あなたは、こんな経験がありませんか?
世間では、あまり知られていないようですが、「強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)」という病気は、受験生の間でも決して少なくありません。
なぜなら、受験勉強に伴う精神的なストレスや、不合格になるかもしれないという恐怖心が、「強迫性障害」を増悪させる大きな要因となるからです。
また、病気としての「強迫性障害」には至っていないものの、多くの受験生がストレスのため、一時的に「強迫性障害」に類似した脳機能の状態に陥ります。
「強迫性障害」に陥った脳を検査すると、前部帯状回(Anterior cingulate cortex)と、眼窩前頭皮質(Orbitofrontal cortex)などに特徴のある活動が認められます。
さらに、病気としての「強迫性障害」ではなくても、試験中に先ほど例示した失敗をしてしまう受験生の脳機能を検査すると、一時的ではありますが、脳の中で同様の反応が見られるのです。
試験になったら、本来の学力に見合った点数が取れない受験生は、程度の差はありますが、大なり小なり、脳がこうした状態に陥っている側面あるわけです。
合格を勝ち取るためには、こうした自分自身の脳の状態を良く理解した上で、適切な対処が求められます。
病気としての「強迫性障害」についても、一時的な「強迫性障害」に類似した脳機能の状態についても、模擬テストの答案用紙を見れば、ある程度、チェックができます。
後ほど解説しますので、受験生やご家族の方は、よく読んでいただきたいと思います。
一般的には、「強迫性障害」とは、強い不安やこだわりによって、日常生活に支障をきたす病気です。
受験生特有の強迫性障害 について解説する前に、まず、一般的な強迫性障害について、簡単に触れておきましょう。
普通の強迫性障害の場合は、以下のような症状が現れるのが一般的です。
・手が不潔になっているのではないかと不安になって手を洗い続けるという「手洗い強迫」
・カギのかけ忘れやガスの消し忘れが気になって何度も確認する「確認強迫」
・ラッキーナンバーなど過剰に縁起担ぎをして生活に不便をきたす「縁起強迫」
もちろん、受験生の場合もこうした症状が現れることがありますが、見逃してはならないのは、受験勉強に特有の症状だけが現れる場合も多いということです。
なぜなら、受験生にとって不安やストレスの対象となるのは、カギのかけ忘れやラッキーナンバーなどではなく、模擬テストや志望校の選択など、受験そのものである場合が一般的だからです。
実際、模擬テストの成績が急落したため当院を受診され、強迫性障害が初めて見つかるというケースも少なくありません。
世間でよく知られている「手洗い強迫」や「確認強迫」がないからといって、「強迫性障害」の心配はないと決め付けるのは危険だということです。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
本郷赤門前クリニック
受験生特有の強迫性障害による症状を見つけ出す上で最も参考になるのは、模擬テストの答案用紙と問題用紙です。
答案用紙には、バランスの良い解答が書けなくなることが多く、得点が一定の分野に偏っていたり、不自然なこだわりが見受けられたりします。
私の心療内科クリニックでは、受験生の脳やメンタルを診断するために、模擬テストや定期テストの答案用紙を脳医学の観点で分析しています。
実際に受験生の答案用紙を注意深く分析すると、受験生特有の強迫性障害による解答の特徴が浮かび上がってくるのです。
たとえば、ある受験生の答案用紙は、数学の模擬テストで、普通に式を変形すればいいだけなのに、必要条件と十分条件をともに満たしていることをクドクドと説明してありました。
受験生を専門に診療している心療内科医としては、それだけでピンとくるのですが、他の検査も含め、丁寧に診察をした結果、やはり「強迫性障害」が見つかりました。
また、問題用紙には、通常では見られない独特の書き込みがしてある場合も少なくありません。
たとえば、英語の長文読解の問題で、課題文の単語に、片っ端から記号が書き入れられ、修飾・被修飾の関係など文の構造が明らかに必要以上に示されているというものです。
この場合も、診察の結果、「強迫性障害」が見つかることが多いのです。
模擬試験で脳の状態を診断する方法については、以下のページをご参照ください。
従来は、抑うつ症状や不安感が強い場合、抗うつ薬のSSRIなどの投与が行われてきました。
しかし、脳が成長過程にある23歳未満の場合は、こうした薬の副作用が心配になるケースが多いのです。
また、一般的なうつ病の場合より、さらに大量の服用が必要となることが多いという問題もあります。
これに加え、通常は1年間から2年間ほど、薬を飲み続ける必要があるという点も、投薬治療の大きな欠点です。
このようなデメリットを考慮すると、安易に薬に頼る治療は考えものだというのが私の見解です。
当院で重視しているのは、「磁気刺激療法」と「曝露反応妨害法」という治療法を組み合わせることです。
磁気刺激療法については、脳機能を高める効果もあり、受験生にはとてもメリットが大きいものです。
これについては、「受験生への磁気刺激治療」のページで詳しく解説していますので、ご参照ください。
一方、「曝露反応妨害法」とは、恐れたり避けたりしていた状況に、あえて向き合うことで、脳を慣れさせていくものです。
一般的な「手洗い強迫」や「確認強迫」については、すでに「曝露反応妨害法」のスタンダードな手法が確立されています。
当院では、それを受験勉強の実情に合わせて改良し、「受験生に特化した曝露反応妨害法」を完成させました。
「受験生に特化した曝露反応妨害法」の長所は、磁気刺激療法と同じで、単なる治療にとどまらず、解答能力を高めることで、試験でも得点アップにダイレクトに役立つということです。
つまり、病気の治療と受験勉強を、車の両輪のように同時に行うことができるのです。
また、病気としての強迫性障害ではなくても、試験中はストレスが高まるため、解けない問題に過剰に固執したり、不安感が暴走するなど、強迫性障害に類似した症状が現れます。
こうした対策にも、「受験生に特化した曝露反応妨害法」は大きな力を発揮します。
弊院では、2020年10月より、これまでの診療プログラムを一部見直し、「5つの特別診療」をスタートいたしました。
その中の「①集中力特別診療」の中で、光トポグラフィー検査のデータなどを見極めた上で、脳の状態に最も適合した「受験生に特化した曝露反応妨害法」を行い、入試本番での集中力アップと得点力アップを図っています。
模擬テストの答案用紙などをチェックし、該当する症状が見つかった場合は、ぜひ、こちらをお受けいただくことをおすすめします。
見落としてはいけないのは、受験生に限っていえば、強迫性障害の症状が現れた場合、受験期のうつ症状、「受験うつ」を併発していることが多いのです。
一般的には、強迫性障害の方の3人に1人が、うつ病を併発されています。
しかし、受験生に限れば、この割合はもっと多いと考えるべきです。
さらに、合格を勝ち取るために本当の意味で問題になるのは、「受験うつ」のほうかもしれません。
その症状の一つとして、「強迫性障害」に見られる症状が出ているケースも少なくないのです。
症状だけを見て強迫性障害だと決めつけるのではなく、その背後に「受験うつ」が潜んでいないか検査が必要です。
強迫性障害の症状が「受験うつ」のSOSサインとなっていることが多く、志望校への合格を勝ち取るためには、このことが極めて重要なのです。
そこで本郷赤門前クリニックでは、2017年より、受験強迫性障害の方も「最新脳医学治療(受験うつ)早期合格コース」の診療プログラムの中に組み込みました。
これにより、志望校合格への高い実績をたたきだすことに成功しています。
参照した研究論文のリスト
① Flament, M. (1990). [Epidemiology of obsessive-compulsive disorder in children and adolescents].. L'Encephale.
② Hanna, G. (1995). Demographic and clinical features of obsessive-compulsive disorder in children and adolescents.. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry.
③ Zijlmans, J., Marhe, R., Ende, J., Verhulst, F., Popma, A., Tiemeier, H., & Heuvel, O. (2017). Children with Obsessive-Compulsive Symptomology in the General Population: Different Subtypes?. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics.
④ Iniesta-Sepúlveda, M., Rosa-Alcázar, A., Rosa-Alcázar, Á., & Storch, E. (2014). Evidence-Based Assessment in Children and Adolescents with Obsessive–Compulsive Disorder. Journal of Child and Family Studies.
⑤ Hamburger, S., Swedo, S., Whitaker, A., Davies, M., & Rapoport, J. (1989). Growth rate in adolescents with obsessive-compulsive disorder.. The American journal of psychiatry.
⑥ Moradi, M., Fata, L., Abhari, A., & Abbasi, I. (2014). Comparing Attentional Control and Intrusive Thoughts in Obsessive-Compulsive Disorder, Generalized Anxiety Disorder and Non Clinical Population. Iranian Journal of Psychiatry.
⑦ Rady, A., Salama, H., Wagdy, M., & Ketat, A. (2013). Obsessive compulsive phenomenology in a sample of Egyptian adolescent population. European Journal of Psychiatry.
⑧ Prochazkova, L., Parkes, L., Dawson, A., Youssef, G., Ferreira, G., Lorenzetti, V., Segrave, R., Fontenelle, L., & Yücel, M. (2017). Unpacking the role of self-reported compulsivity and impulsivity in obsessive-compulsive disorder. CNS Spectrums.
⑨ March, J., Mulle, K., & Herbel, B. (1994). Behavioral psychotherapy for children and adolescents with obsessive-compulsive disorder: an open trial of a new protocol-driven treatment package.. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry.