「薬は本当に効いているのか?」

光文社新書「受験うつ」第4章より


この章では、現在、受験うつに対して医療機関で一般的に行なわれている治療に関して問題点を指摘するとともに、

早期の回復と志望校への合格につながる新しい治療法についてご紹介します。

 

 

私は、受験うつに限らず、そもそも未成年の方のうつ病に対する現在の医療のあり方について大きな疑問を、日々感じています。

 

それは、私のクリニックで開設しているセカンドオピニオン外来でのことです。

 

 

セカンドオピニオンとは、主治医とは利害関係のない医師が第三者の立場で治療の是非に対してアドバイスするものです。

 

こうした活動の中で、未成年に対して抗うつ薬が安易に処方されており、

しかも効果が出ているか疑わしいにもかかわらず、長期に処方が続いている場合も少なくないという現状をまのあたりにしているのです。

 

 

内因性うつ病と神経症性うつ病

 

かつては抗うつ薬を処方するにあたって、患者が「内因性のうつ病」なのか「神経症性のうつ病」なのかを判断するのが、医師にとって非常に大事なことでした。

 

この二つの違いを一言でいうと、脳の神経細胞の異常に基づくものが内因性うつ病、悲しい体験など心理的な要因によって発病するのが神経症性のうつ病です。

 

なぜこの区別が重要かというと、抗うつ剤は内因性のうつ病にはよく効き、神経症性のうつ病にはさほど効かないという違いがあるからです。

 

 

ここまで説明してきたように、受験うつに関して言えば神経症性のうつ病の割合が大きく、抗うつ薬は効きにくいタイプが多いと考えられます。

 

そのため、同じ症状や経過だとしても、以前なら抗うつ薬の処方は見送られていたケースがかなり多かったはずなのです。

 

 

しかし現在は、神経症性のうつ病患者にも抗うつ薬が積極的に処方されています。

 

これには、うつ病の医療を取り巻く二つの大きな地殻変動がありました。 

 

 

一つは、臨床の現場で必ずしも内因性か神経症性かを区別しないということが増えてきたからです。

 

現在、主に使われている診断基準では、症状が一定の要件を満たせば、なかば自動的にうつ病と診断することになっています。

 

その背景には、そもそも内因性と神経症性を明確に区別することは医学的に困難だということ、

さらに、この両者が混在した状態になっている場合がかなり多いという現実があります。

 

だったら、無理に区別をしなくてもいいじゃないかということになったわけです。・・・

 

 

光文社新書「受験うつ」第4章より

 

「受験うつ どう克服し、合格をつかむか」

光文社新書 

 

吉田たかよし 待望の新刊本!

12月16日、発売決定!

 

<目次>
第1章 増える受験うつ
第2章「受験うつ」のメカニズム
第3章 受験うつは答案用紙に表れる
第4章 間違いだらけの治療法
第5章 親のひと言が子どもを受験うつにする
第6章 うつにならない勉強法
第7章 親のコーチングで結果は出せる

 

<内容紹介>
未成年のうつ病、しかも、ストレスが増える受験期に突然発症する人が急増している。
子どもと大人では症状が大きく異なるため、親も受験生本人も発症に気が付かない
ケースが多いのが実情である。
中学受験ではもちろんのこと、高校受験や大学受験で頻発しており、受験生専門外来の
私のクリニックにも、勉強が手につかなくなった多くの受験生が来院している。
受験期のうつで人生を狂わさないために、受験生本人が、家族ができることは何か?
また、脳機能から考えたストレス管理や効率の良い勉強法もまとめた、
うつ病の有無を問わず受験を控えたすべての方に必見の書。