試験を受けているときに、頭の中で音楽が流れ続ける・・・。
同じメロディーが頭の中で繰り返されて、勉強に集中できない・・・。
これが「イヤーワーム(Stuck Song Syndrome)」です。
成績が下るだけでなく、脳の病気が隠れている場合もあります。
イヤーワーム
Stuck Song Syndrome
効果的な止め方と受験成功への対策
✓ イヤーワーム(Earworm )とは、頭の中で音楽の同じフレーズが、何度も何度も強迫的に繰り返される現象です。
✓ イヤーワーム(Earworm)を直訳すると「耳の虫」ですが、医学では「Stuck Song Syndrome」と言います。
✓ イヤーワームは、脳の側頭葉にある聴覚野が音楽によって自動的に活性化される性質を持っているために起こる現象ですが、受験生の場合は入試の最中に集中力を奪われるため、落ちる原因になります。
✓ イヤーワームの背後に強迫性障害や受験うつが隠れている場合が多く、放置してはいけません。
✓ 対処の方法や専門のプログラムについても、ご紹介します。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
本郷赤門前クリニック
イヤーワーム(Stuck Song Syndrome)という言葉を聞いたことはありますか?
これは音楽の特定のフレーズが脳内で強迫的に何度も何度も繰り返される現象を指すもので、しばしば耳にした音楽やメロディが頭から離れないと感じる体験です。
私のクリニックで見るなかで、特に受験生がこのイヤーワームに苦しむケースが多く見受けられます。
一例として、重要な入試の最中に「ビーック、ビック、ビック、ビックカメラ♫」といった商業音楽のフレーズが頭の中を占領し、問題解決の邪魔をするという事例があります。
このような状況は、残念ながら結果として不合格につながる可能性が高いのです。
このイヤーワーム現象は、受験生にとって潜在的なリスクとなる可能性があります。
特に、日常生活や学習時間中に頻繁にイヤーワームを経験する受験生は、その存在を無視することはできません。
なぜなら、緊張感が高まる本番の入試では、症状が悪化することが多いからです。
したがって、事前の適切な対策が必要となります。
この記事では、イヤーワーム(Stuck Song Syndrome)について深く理解し、その効果的な対処法を学び、受験成功へと導くための具体的な戦略を提案します。
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イヤーワーム(Earworm)、つまり「耳の虫」。
この語は、かつて人々が耳の中に虫がいて、音楽を奏でているかのように感じたことから名付けられました。
医学的には「Stuck Song Syndrome」、つまり「頭から離れない曲の症候群」に相当します。
このイヤーワームは、脳の側頭葉に位置する聴覚野が音楽に反応して自動的に活性化されるために生じる生理現象です。
一般的な調査によれば、98%の人々が一度はイヤーワームを経験しているとされ、これ自体は病状ではありません。
日常生活の中で時折イヤーワームを経験する程度ならば、特に問題はありません。
さらに、「Musical Imagery Repetition(音楽表象反復)」または「Involuntary Musical Imagery(不随意音楽表象)」という現象は、楽曲を頭の中で反復するが、不快感を伴わず、自分の意志でコントロール可能な状態を指します。
もちろん、自己コントロール可能である以上、こちらも心配する必要はありません。
しかし、勉強や試験問題解答などの集中を必要とする状況下で、自分の意志とは無関係にイヤーワームが頻繁に発生すると、この現象は問題となり得ます。
イヤーワームが集中力を奪うため、学習や業務への大きな障害となります。
特に受験生がイヤーワームに悩む場合、強迫性障害や受験うつなどの脳の疾患が潜在的に存在する可能性が高く、注意が必要です。
これらの理由から、「受験イヤーワーム」という特別な状態として、一般的なイヤーワームとは別に扱うべきです。
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一般的にイヤーワームは女性に多く見られる傾向がありますが、受験生の範囲では男性にも頻繁に見受けられます。
音楽を日常的に多く聞く人々がイヤーワームを経験することがしばしば指摘されています。
しかし、受験イヤーワームという特殊な状況においては、この傾向が明確ではありません。
音楽をほとんど聞かない受験生でもイヤーワームに悩まされるケースが珍しくないのが現実です。
例えば、「ビーック、ビック、ビック、ビックカメラ♫」のメロディに悩まされていた受験生も、実はその店で買い物をした経験が一度もなく、なぜこのフレーズが頭の中に残ってしまったのか理解できないでいました。
これらの事例から見て取れる受験イヤーワームの本質は、メロディーを聞いた経験やそのメロディー自体の性質にあるわけではない。
実はそれよりも、受験生の脳の特定の状態や特性が大きく影響していることが示唆されます。
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イヤーワームは一時的な現象から深刻な脳の疾患まで、その原因はさまざまです。
ここでは、一時的なイヤーワームを解消する3つの簡単な手法をご紹介します。
ただし、イヤーワームを解消する手法をご紹介する前に、大事な注意点があります。
受験生が頻繁にイヤーワームを経験する場合は、後ほど解説するように、受験の失敗に直結する脳や心の疾患が隠れていることが多く、小手先のテクニックに頼ってイヤーワームを無理やり消すのは危険です。
むしろイヤーワームが脳の不調を教えてくれる貴重なSOSサインと考え、原因となっている疾患を根本的に治療することが合格への最良の道です。
とはいえ、受験生であっても、特に脳や心の疾患にかかっているわけではなく、一時的な現象としてイヤーワームが生じるということもよくあることです。
実は、これからご紹介するお手軽な3つの対処法は、それを見極めるために大変に役に立つものなのです。
どういうことかというと、医学では「診断的治療」というのですが、確定診断がつかなくても、危険性が低ければ可能性の高そうな原因の治療をとりあえず実行してみて、効果があればそれが原因だったわかる、つまり後から診断が下るというものです。
イヤーワームも同じで、とりあえず、ご紹介するお手軽な対処法を実践していただき、それでイヤーワームがなくなれば、単なる一時的な現象で、特定の危険な疾患ではなかった可能性が高いという診断が後からつくわけです。
脳医学的には、タイムリミットは2週間です。
2週間たってもイヤーワームが消えなければ、何らかの疾患が隠れている可能性は否定できないので、専門の医療機関で検受けてください。ください。
それでは、あなたが簡単に実践できる、イヤーワーム解消法を3つご紹介します。
側頭葉に位置する脳の聴覚中枢は、一つのタスクに集中する特性を持っています。
したがって、勉強中にイヤーワームに悩まされた際は、勉強内容を声に出して読む、つまり音読することを試みてみてください。
大抵の場合、聴覚中枢は音読内容への情報処理にシフトし、イヤーワームの強度が軽減します。
イヤーワームが消えたら、再び通常の黙読へと戻ります。
しかし、しばらくするとイヤーワームが再び始まることがあるでしょう。
その際は再び音読へと切り替えてみてください。
そしてイヤーワームが消えたら黙読に戻る、これを繰り返します。
これがただの一時的なイヤーワームで、特定の脳や心の疾患に起因しない場合、この手法で問題は解消することがほとんどです。
音読はただの一時しのぎではなく、脳の聴覚中枢を巧みに操作することで、一時的なイヤーワームの解消に役立つ効果的な対策法なのです。
多くの人が驚くかもしれませんが、イヤーワームとなっている曲を実際に聴くと、イヤーワームが消えることが研究で示されています。
なぜなら、イヤーワームは多くの場合、曲の一部やサビが頭の中でループ再生される現象です。脳
内のニューロン(神経細胞)のネットワークもこのループを反映し、終わらないイヤーワームの一因となっています。
この現象に対して、その曲を実際にフルコーラスで聴くと、脳内でも曲が終了することで、無限ループから脱出することができます。
全てのイヤーワームに対して効果があるわけではありませんが、試す価値はあります。
ただし、この方法を何度も繰り返すと、曲を聴くこと自体が新たなイヤーワームの原因となる可能性もあります。
そのため、3回試しても効果が見られない場合は、その曲の再生を停止し、他の手段を試すべきでしょう。
意外かもしれませんが、ガムを噛むことでイヤーワームが軽減する傾向がある、という研究結果もあります。
ガムを噛む行為は、脳の奥深くに存在する脳幹網様体を刺激し、脳内の認知機能の制御能力を高めるとされています。
これにより、イヤーワームを鎮める方向へと脳の状態が変化する可能性があります。
さらに、ガムを噛むという繰り返しの運動のリズムが、音楽のリズムに干渉する可能性も考えられます。
ただし、この方法が全ての人に効果的というわけではありませんので、試してみて効果があるかどうか確かめると良いでしょう。
また、ガムを噛むこと自体が脳の血液循環を高めるとされ、全体的な脳の働きを改善させる効果があります。
実際、ガムを噛むだけで数学の成績が上がるという研究結果も報告されており、イヤーワームに対する効果がなくても、受験生としてのパフォーマンス向上のためには試してみる価値がある生活習慣です。
今回、私たちはイヤーワームを抑制するための3つの簡単な方法をご紹介しました。これらは誰でも手軽に試せる対策で、一時的なイヤーワームの症状を緩和するのに有効です。
しかし、重要な注意点として、これらの方法はあくまで一時的な症状を抑える「対処療法」であり、イヤーワームの根本的な原因を解消するものではありません。もしイヤーワームの背後に何らかの疾患が隠れていた場合、その疾患を根本的に治療する効果はありません。
特に、これらの方法に2週間以上にわたり頼り続けていると、背後の疾患を治療するための貴重な時間を失ってしまう可能性があります。
それゆえ、2週間以上イヤーワームが続く場合には、心や脳の病気が隠れている可能性を考慮することが重要です。そのような状況では、早期に原因となる疾患を発見し、適切に治療することが、目指す学校への合格への道を開くカギとなります。
では具体的に、どのような疾患が隠れている可能性があるのでしょうか?以下で詳しくご説明します。
受験生が頻繁にイヤーワームに悩まされる場合、背後に隠れた脳の疾患として最も頻繁に見られるのが強迫性障害です。
強迫性障害とは、自分の意志とは異なる思考が繰り返し浮かんでしまうという脳の病態です。
一般的には、何度も手を洗う、戸締りを確認するなどの行動が強迫性障害の症状としてよく知られています。しかし、これらの繰り返しの行動が音楽の旋律に向かうと、それがイヤーワームに変化することがあります。
受験生の場合、強迫性障害の症状は一般的なものとは少々異なる特徴を持つことがしばしばあります。
具体的な内容については、「受験の強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)」のページをご参照ください。
「受験の強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder)」
さらに、イヤーワームの症状と並行して勉強への意欲が著しく低下している場合、それは「受験無気力症候群(Exam Apathy Syndrome)」である可能性があります。
「受験無気力症候群(Exam Apathy Syndrome)」についての詳細な説明はこちらのリンクをご覧ください。
「受験無気力症候群(Exam Apathy Syndrome)」
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受験生がイヤーワームに苦しむ場合、他の潜在的な問題が潜んでいる可能性もあります。
その一つが、「受験うつ」と呼ばれる状態です。
受験生がこの状態に陥っているか、あるいはその予備軍になっている可能性もあると考えられています。
このような複雑な脳内の現象を正確に把握し、適切な対策を立てるためには、受験生特有の問題に対応した光トポグラフィー検査が非常に有用とされています。
以下のリンクをクリックすると、「光トポグラフィー検査」についての詳細な説明をご覧いただけます。
この新進の技術を利用することで、受験イヤーワームの根本的な原因を探り、効果的な対策を立てることが可能となります。
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2020年からは、志望校への合格をより強力にサポートするために、「5つの特別診療」を開始しました。
以下の5種類の特別診療の中から、脳機能についての検査データをもとに、必要なものをチョイスして受けていただきます。
受験イヤーワームの場合は、脳が集中力を大幅に低下させている場合が多く、それに対する治療として、②集中力アップ特別診療がとりわけ効果的です。
また、「①ヤル気アップ特別診療」、「②イライラ対策特別診療」も必要になる場合が多く見られます。
以下をクリックしていただけば、「5つの特別診療」に関する詳しい案内がご覧いただけます。
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参照した研究論文のリスト
① Beaman, C., & Williams, T. (2010). Earworms (stuck song syndrome): towards a natural history of intrusive thoughts.. British journal of psychology.
② Ashmore, R., Wild, J., & Schmidt, M. (2005). Brainstem and Forebrain Contributions to the Generation of Learned Motor Behaviors for Song. The Journal of Neuroscience.
③ Chen, J., Stepanek, L., & Doupe, A. (2014). Differential contributions of basal ganglia and thalamus to song initiation, tempo, and structure.. Journal of neurophysiology.
④ Rajan, R. (2018). Pre-Bout Neural Activity Changes in Premotor Nucleus HVC Correlate with Successful Initiation of Learned Song Sequence. The Journal of Neuroscience.
⑤ Kirn, J. (2010). The relationship of neurogenesis and growth of brain regions to song learning. Brain and Language.
⑥ Matsui, T., Matsunaga, H., Ohya, K., Iwasaki, Y., Koshimune, K., Miyata, A., & Kiriike, N. (2003). Clinical features in two cases with musical obsessions who successfully responded to clomipramine. Psychiatry and Clinical Neurosciences.
⑦ Monzani, B., Rijsdijk, F., Harris, J., & Mataix-Cols, D. (2014). The structure of genetic and environmental risk factors for dimensional representations of DSM-5 obsessive-compulsive spectrum disorders.. JAMA psychiatry.