モデルの女性は深田恭子さんではありません。
このページの要点は?
✓ それまで真面目に勉強していたのに、急にゲームやスマホで時間を浪費したり、塾を休んだりした場合、今、急増している「受験適応障害(Exam Adjustment Disorder)」に陥っている危険があります。
✓ 親は単なるサボりだと勘違いする場合が多いのですが、受験適応障害は心の病で、放置しておくと重度の受験うつに移行することも多いので注意が必要です。
✓ 親が「勉強しなさい」と注意すると、「うるさい!」などと大声で怒鳴り返してくることが多く、これは大人が適応障害になったときに、深酒をして暴れたり危険な運転をして事故を起こすのと本質は同じです。
✓ 女優の深田恭子さんが適応障害になりドラマを降板されましたが、受験適応障害に陥る受験生は深田さんと共通点が多いという特徴があります。
✓ 脳の状態を見極める検査法と、メンタル面を立て直して志望校への合格を勝ち取る治療法についてもご紹介しています。
それまでコツコツと真面目に勉強していたのに、急に勉強を投げ出して、ゲームやスマホばかりやっている・・・。
以前は、塾を休むことなんてなかったのに、今は出席率が0%・・・。
親が「勉強しなさい」と注意すると、鬼のような形相で「うるさい!」と怒鳴り返す・・・。
受験生にこのような症状が現れたら、今、急増している「受験適応障害(Exam Adjustment Disorder)」に陥っている危険があります。
適応障害というと、就職や入学で環境が変わり、それに適応できなくて心がふさぎ込む病気だというイメージをお持ちの方が大半だと思います。
もちろん、世間一般では、こういうケースが多いのは事実です。
しかし、受験生に限っていうと、勉強のギアを上げる生活、つまりハードな受験生活に適応できないことで、適応障害を発症する場合のほうが、圧倒的に多いのです。
なぜ、このような心の病に陥るのか?
後ほど詳しく説明しますが、それは、今どきの受験生を取り巻く環境が、適応障害を発症しやすい条件を兼ね備えているからです。
受験勉強を投げ出してスマホばかり眺めたり、理由もないのに塾を休みだすと、ほとんどの親御様は、サボっているのだと思います。
でも、受験適応障害は、適切な治療と対策が必要な心の病です。
決して、単なるサボりだと勘違いしてほしくありません。
もちろん、受験生の年代では、勉強をサボりたいと思うのは当然のことで、実際、サボっている生徒は世間にいっぱいいます。
しかし、元来、真面目な生徒さんで、それまではコツコツ真面目に勉強していたのに、急に受験勉強を投げ出した場合は、サボっているのだと決めつけてはいけません。
真面目な性格は、通常は、成績を上げるのにとても望ましい素養です。
ただし、適応障害についていうと、真面目であることは、発症するリスクを大幅に高める要因であることがわかっています。
良い意味でも悪い意味でも、嫌なことを受け流して物事を適当に処理しようとはしません。
それが、心の病気を生み出す素地となってしまうのです。
女優の深田恭子さんが、適応障害を発病し、ドラマを降板されることが所属事務所から発表されました。
私自身、以前、深田さんとテレビ番組でお話をさせていただいた経験がありますが、彼女のメンタルは、受験適応障害に陥ってしまった受験生と、共通点が驚くほど多いのです。
一部の識者は、「深田さんが適応障害になったのは、芸能界にストレスが多いからです」などと説明されているようですが、私はまったく見当外れだと思います。
彼女は、芸能人として大ベテランで、そのストレスには、もう10年以上も前から適応されているはずです。
それよりも、プライベートで何か環境の変化があって、それに適応できなかったのだと私は思います。
実際、女性の場合は、結婚問題や失恋で適応障害になる場合もかなり多いのです。
それよりも、私が注目しているのは、彼女の人生がこれまで、あまりにも順風満帆だったということです。
これが、受験生の適応障害と酷似しているのです。
受験適応障害になりやすい条件は以下です。
① 経済的に恵まれた家庭で育っている・・・。
② 男子はイケメン、女子は美人で容姿にも恵まれている・・・。
③ 真面目で成績も優秀で、これまで挫折を味わった経験がない・・・。
つまり、一言で言えば、誰もがうらやむ順風満帆の人生が、受験適応障害を生み出す素地となっているということです。
一方、深田恭子さんも思春期の早い段階からアイドルとして成功し、さらに成人になった後も、一流の芸能人の地位を確固たるものとされています。
やはり、誰もがうらやむ順風満帆の人生だと言えます。
では、どうして、順風満帆の人生が適応障害を生み出すのでしょうか?
その答えを読み解く鍵になるのが、自己肯定感です。
自分自身を肯定する自己肯定感が低いと、適応症になりやすいというデータが出ています。
ただし、単に自信を持てばいいということではなくて、ありのままの自分を肯定的に受け入れるということです。
自分の長所を理解して積極的に活かすのは当然、必要ですが、もっと大事なのは、短所があっても卑下せずに、
それも自分らしさだと思って、受け入れるということです。
これが普段からできていると、環境が変わって逆境に陥っても、適応障害になりにくいのです。
深田恭子さんの場合は、短所らしい短所がないまま思春期を終えて、芸能人としても順風満帆で、その結果、雑草のようなタフな自己肯定感は身につかなかったのではないかと私は推測しています。
少なくとも、私が診察した受験適応障害の患者さんは、短所を受け入れる心の訓練が欠如しているケースが大半です。
受験適応障害に関して、もう一つ、多くの方が誤解しているのが、元気そうに見えるから、心の病気ではないだろうという誤解です。
親が「勉強しなさい」と注意すると、「うるさい!」などと、大声で怒鳴り返してくることが多いのですが、一見、元気そうに見えるので、適応障害ではないと決めつける親御様が多いのです。
おそらく世間では、適応障害というと、雅子皇后陛下を思い出される方が多く、その印象が定着したのでしょう。
適応障害は、ふさぎ込む病気だと思っているかたが多いようです。
もちろん、そういうケースも多いのですが、心のコントロールが効かなくなって、社会的な問題行動を起こすことも多いというのも、適応障害のもう一つの特徴です。
大人が適応障害になれば、深酒をして暴れる、あるいは危険な運転をして事故を起こすといったことが起こるのですが、受験生の場合は、それが親に反抗する、塾を休む、勉強を投げ出すといった問題行動として表面化するのです。
患者さんやご家族から最も多い質問が、うつ病と適応障害は、どこが違いのかということです。
まず、一般的な適応障害についていうと、原因となるストレスに明確に反応して症状が出るという点が、うつ病と最も異なる点です。
たとえば、仕事のストレスで適応障害になる場合は、仕事をしているときは症状が激しく、仕事をしなくていい週末は症状が出にくくなります。
実際、適応障害の診断基準では、ストレスに暴露される環境の変化から1ヶ月以内に発症し、原因となるストレス源が除去されると6ヶ月以内に症状がなくなるとされています。
ただ、受験適応障害についていいうと、こうした表面的な相違点で区別するのは、あまり役立ちません。
なぜかというと、受験生の場合は、週末であっても勉強しなければいけないというプレッシャーを心の奥底で感じ続けているからです。
また、入試が終われば受験勉強をする必要はなくなりますが、治療をしなければ落ちてしまうので、それで症状が悪化することはあっても、消えてなくなることはないのです。
うつ病と適応障害を正しく理解するには、その本質的な違いを把握しておくべきです。
病気の本質について、ものすごく大雑把に言うと、適応障害は心の病気、うつ病は脳の病気だといえます。
すごくわかりやすくいえば、スマホに例えたら、適応障害はアプリが壊れているような状態です。
他のアプリは正常に作動するので、ストレスの原因が完全に除去されたら、もとに戻るわけです。
一方、うつ病は、スマホの本体が故障しているような状態です。
この場合は、他のアプリも作動しないわけです。
ものすごく大雑把なたとえで恐縮ですが、本質をご理解していただくのには役立つでしょう。
適応障害について、世間でもう一つ誤解を生じているのは、特別な治療をしなくても、いずれ治るものだと思いこんでいる方が多いということです。
誤解を生む原因になっているのは、適応障害はストレスの原因となる問題がなくなったら6ヶ月以上は症状が持続しないというのが、診断基準となっていることでしょう。
この診断基準は極めて妥当なものですが、これは、6ヶ月以内にみんな治るというものではありません。
適応障害と診断を受けた患者の4割は、後から、うつ病に診断名が変えられています。
これは、途中からうつ病に移行するということもあるし、実は当初からうつ病だったということもあります。
両者の見極めが難しい場合もあるし、両方が混じっている場合も多いのが現実です。
適応障害は心の病気であっても、その背後に潜んでいる脳の病気を見逃さないことが、とりわけ重要なのです。
さらに受験生の場合は、勉強を投げ出すと、当然、成績は下る一方です。
その行き着く先は、間違いなく入試に落ちるという現実です。
実際、入試に落ちて重度の受験うつに陥る人が多く、この点からも早期の治療が不可欠です。
受験適応障害を見極める上で、とりわけ重要だといえるのは、「光トポグラフィー検査」(Optical Topography)を行うことです。
これは、脳の中でも、勉強にとって、特に大切な働きをしている大脳新皮質に関し、どの領域がどの程度、活動しているかを、時間的な変化も含めて計測するものです。
この検査を行うと、単なるサボりたいという気持ちだけでは説明がつかないデータを示す受験生が、数多く含まれていることがわかってきました。
また、受験適応障害のかげに隠れている受験うつを見つけ出すことにも、とても有効な手段です。
受験うつの場合は、脳機能が陥っている問題点に合致した治療を行わないと、勉強への意欲を回復させることはできません。
つまり、志望校への合格を勝ち取ることは困難だということです。
受験適応障害によって失われてしまった受験生の勉強への意欲を早期に回復させ、志望校への合格をつかむために、弊院では、2020年10月から始めた「5つの特別診療」の中に、「ヤル気アップ特別診療」という専門の診療プログラムを設けることになりました。
「5つの特別診療」とは、以下の5種類の特別診療の中から、受験パニックに関する検査データをもとに、志望校への合格に大きな効果が見込める専門の診療を選択して受けていただきます。
このうち、「①ヤル気アップ特別診療」は、文字通り、受験勉強に対する意欲の回復を専門に取り組む診療プログラムですが、同時に集中力が低下している場合も多く、併せて「③集中力アップ特別診療」もお受けになる方が多いようです。
詳しくは、こちらのページをご一読ください。