スマホ依存と受験生
デジタルドーパミンがもたらす脳への影響と対策
スマホ使用の増加は、みなさんが思っている以上に深刻な問題を引き起こしています。
それは、スマホの使用によって脳の機能がかく乱されることによる悪影響です。
その典型例が、親が勉強を促したときの反応です。
「うるさい!」
「黙れ!」
逆切れして暴言を吐くようになったら、ほぼ例外なくスマホの悪影響が脳に生じていると考えるべきです。
もちろん、幼年期から粗暴で不真面目な子どもだったら、それは性格の問題かもしれません。
以前はまじめにコツコツ勉強していた受験生が、あるときを境に勉強を投げ出すようになり、スマホを眺める時間が増えたというケースでは、間違いなくスマホが関与しているのです。
実際、東京大学や京都大学などのトップ校を志向するエリートの受験生にも見られる傾向です。
デジタルドーパミンの罠
我々の脳をどう変えるのか?
現代のスマホは、眺めるだけで脳内に快感を引き起こすドーパミンを大量に生み出すパワーを持っています。
これを「デジタルドーパミン」と称し、その脳への影響に心療内科医が危惧を抱いています。
このデジタルドーパミンの誘惑に脳が負け、スマホ依存症に陥ることは大きな問題です。
しかし、さらに深刻なのは、スマホによって放出されるドーパミンが、中高生の脳機能を歪め、さらには性格にまで影響を及ぼしてしまうことです。
実際に、スマホ依存が原因で精神的な病気を発症している例は数多く、まだ病気には至っていないとしても、病気の前段階にある可能性が高いと言えます。
特に、受験期間中の中高生は、この問題について高度な警戒が求められます。
なぜなら、放置すると、入試が近づくにつれてメンタル状態がさらに悪化し、入試当日にはピークに達する可能性があるからです。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
本郷赤門前クリニック
親に向ける罵声
デジタルドーパミンの犠牲者
心療内科クリニックでカウンセリングを受ける親子に話を聞くと、受験生自身が自分の行動に混乱していることが多く、自問自答していることが明らかになります。
「なぜ親に向かって声を荒げてしまったのか?」
「なぜ親に対してこんなに怒りを感じるのか?」と。
親に向けて言葉を投げかけても、その根底には心の腐敗ではなく、スマホが引き起こすデジタルドーパミンの影響があるのです。
このことは、言葉が荒い子供が親に向かって声を荒げることとは根本的に異なります。
つまり、本来は温和な子供がなぜ親に向けて罵声を浴びせるのか?
その答えの一つは、スマホが生成するデジタルドーパミンにより、脳が支配されているという事実にあるのです。
言い換えれば、脳がデジタルに"ハッキング"されているのです。
その結果、親に対して罵声を浴びせる子供たちは、実はデジタルドーパミンの犠牲者とも言えるのです。
さらに、我々の課題は、この問題にどう取り組むか、そして子供たちがデジタルの虜とならず、また親と子の間に温かい関係を保つ方法を見つけ出すことです。
そのためには、我々全員がこの「デジタルドーパミン」の存在を認識し、どのように影響を及ぼすかを理解することが必要となります。
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受験のプレッシャーとデジタルドーパミンが触媒となると?
試験に対する成功の期待は、受験生に緊張感を与えます。
自ずと、焦燥感が生まれるのは避けられません。
理想的には、ストレスへの対抗力や心の耐久性を強化することでこれらの問題を乗り越えられるはずです。
しかし、現代の若者は精神的な弱さが見られ、これらの挑戦を克服することが一層困難になっています。
さらに、スマートフォンが常に手の届く範囲にあることが・・・
デジタルドーパミンによるスマートフォンからの強烈な脳への刺激は、その一時的な特性により、受験の圧力や勉強の必要性から一時的に逃避することができます。
しかし、このパターンが繰り返されると、スマホ依存が深化し、脳への損傷が増大します。
結果として、受験の不安とデジタルドーパミンが結びつき、受験生の脳と心は混乱の渦に巻き込まれてしまいます。
デジタルドーパミンの解消法は?
この問題に対処するための初めの一歩は、当事者とその家族が、スマホが脳に与える影響を正確に理解し、その弊害に直接向き合うことです。
問題を見て見ぬふりをすると、デジタルドーパミンの影響で、日々、脳の状態が劣化してしまいます。
親子でスマートフォンの使用について話し合うことは必要ですが、そのタイミングの選び方が極めて重要です。
なぜなら、脳がスマホの影響にどれほどさらされているかは時間帯によって変わるからです。
深夜は脳がスマホのドーパミンにより、より制御されやすくなります。
だから、夜にスマホの使用を制限しようとすると、あまり効果が見られません。
それどころか、デジタルドーパミンによる焦燥感から、親に対する暴言が勃発するだけでしょう。
一方、午前中から早い午後にかけては、脳はドーパミンの喜びを制御する能力が比較的高まります。
親子で冷静に話し合うには、この時間帯が最適です。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
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混乱をきたした子どもの脳をどうリセットする?
だが、注意点は、「スマホを使うな!」と一方的に叱りつけても、問題解決にはならないということです。
デジタルドーパミンによって混乱した脳は、ただ一瞬で親に怒りをぶつけるだけでしょう。
まず第一に、受験に対する不安や勉強の苦しみについて、子どもの気持ちを理解し、共感することが必要です。
そして、スマホやゲーム以外にも子どもの脳や心に好影響を与えるものを共に見つけ出しましょう。
受験を控えた生徒の場合、試験が終わった後に何をしたいか、または楽しみについて話し合うことが良いでしょう。
海外旅行に行く!
ディズニーランドに行く!
渋谷で新しい服を買う!
このように、具体的なスマホ以外の楽しみを見つけるのをサポートしましょう。
子どもの脳を救う、アナログセロトニンの力!
これにより、子どもの脳は、ネット依存のデジタルドーパミンから、現実の体験によるアナログセロトニンへと徐々に切り替わっていきます。
セロトニンは、リラクゼーションをもたらすホルモンとして知られ、家族の絆を支える重要な脳内ホルモンです。
アナログな活動によって増加するセロトニンは、脳内でデジタルドーパミンと対抗し、その暴走を抑制する効果があります。
だからこそ、脳をデジタルドーパミンの支配から解き放つためには、このプロセスが必須となります。
多くの親たちは、子どものスマホ依存を即座に止めさせたいと思います。
親としての愛情からくる当然の反応ですが、瞬間的なデジタルドーパミンの問題を瞬間的に解決しようとすると、長期的に見ると逆効果であり、そもそも可能ではありません。
まず、一歩引いて、セロトニンによって偏った脳の状態をリセットすることが重要です。
試験が終わった後の旅行やレジャーなどを話し合い、リアルな喜びを見つけることが、最終的には子どもの脳の回復を早める道となるのです。