勉強恐怖症 東京大学 本郷赤門前クリニック 吉田たかよし

academic anxiety

勉強恐怖症

恐怖から自信への道

克服のための具体的な手段とサポートの重要性


「勉強恐怖症」という言葉を聞いたことがありますか?

 

「勉強恐怖症(academic anxiety)」とは、勉強に対して強い恐怖や不安を感じることによって、集中力の低下を招いたり、プレッシャーに押しつぶされてテストや課題に取り組めなくなるものです。

この症状は、日本でも多くの児童・生徒・学生が抱える問題となっており、本人や親が気づかぬうちに罹患していることも多く、注意が必要です。

 

 

勉強恐怖症の症状は、課題やテストに取り組めない、学習に強い不安を感じる、集中力が低下している、勉強に強い抵抗感を感じる、学習内容を理解できない、勉強に時間がかかりすぎる、頭が混乱してしまう、勉強に興味を持てない、学習が遅れている、勉強を避けるようになっている・・・など、多岐にわたります。

 

 

勉強恐怖症の結果、勉強に対する苦手意識から大学受験を諦めたり、あるいは医師になるなどの勉強が必要なキャリアパスを選ばなくなったりすることがあります。

悔いの残らない人生を送るためには、決して放置してはいけません。

 

また、勉強恐怖症が長期化すると、うつ病や不安障害といった精神疾患に発展することもあります。

 

 


勉強恐怖症の10の症状とは?

セルフチェックをしましょう!


まず、あなた自身が、あるいは、あなたのお子様が勉強恐怖症の可能性がないのか、セルフチェックをしましょう。

 

勉強恐怖症には、以下のような代表的な症状が10項目あります。

いくつの項目が該当するかカウントしながら、セルフチェックを進めていってください。

 

 

① 課題やテストに取り組めない

 

勉強恐怖症の典型的な症状として、課題やテストに対して取り組むことができないというものがあります。

何度も課題やテストを見直したり、解答を書き直したりすることで時間を浪費してしまい、結局は何も進まない状態に陥ることがあります。

 

 

② 学習に対して強い不安を感じる

 

勉強恐怖症の人は、学習に対して強い不安を感じることがあります。勉強に取り組む前から、失敗することや成績が悪くなることを恐れてしまい、勉強そのものに対してネガティブなイメージを持ってしまうことがあります。

 

 

③ 集中力が低下している

 

勉強恐怖症の人は、勉強に取り組むことでストレスを感じることがあります。

そのため、集中力が低下してしまい、学習効果が低下することがあります。

また、集中力が低下することで、勉強に取り組むこと自体に苦痛を感じるようになってしまうこともあります。

 

 

④ 勉強に対して強い抵抗感を感じる

 

勉強恐怖症の人は、勉強に対して強い抵抗感を感じることがあります。

勉強が苦手なことを自覚しているため、勉強に取り組むことが嫌になってしまい、やりたくないという気持ちが強くなってしまうことがあります。

 

 

⑤ 学習内容を理解できない

 

勉強恐怖症の人は、学習内容を理解できないということがあります。

自分自身が学習についていけていないことに不安を感じ、学習が進まなくなってしまうことがあります。

学習内容を理解できないことが続くと、ますます勉強に対するモチベーションが低下してしまうことがあります。

 

 

⑥ 勉強に時間がかかりすぎる

 

勉強恐怖症の人は、勉強に時間がかかりすぎることがあります。

勉強に対する不安や抵抗感が強いため、勉強に取り組むことが難しくなり、学習効率が悪くなってしまうことがあります。

また、時間がかかりすぎることで、勉強に取り組むこと自体に疲れを感じてしまうこともあります。

 

 

⑦ 頭が混乱してしまう

 

勉強恐怖症の人は、勉強に取り組むことで頭が混乱してしまうことがあります。

勉強内容が複雑であったり、自分自身が理解できていないことが多いため、頭がいっぱいになってしまい、混乱してしまうことがあります。

 

 

⑧ 勉強に対して興味を持てない

 

勉強恐怖症の人は、勉強に対して興味を持てないことがあります。

学習内容が自分自身にとってつまらないと感じたり、勉強が苦手なために興味を持つことができなくなってしまうことがあります。

興味を持てないことで、勉強に対するモチベーションが低下し、勉強恐怖症の症状が悪化することがあります。

 

 

⑨ 他人に比べて学習が遅れていると感じる

 

勉強恐怖症の人は、他人に比べて自分自身の学習が遅れていると感じることがあります。

自分自身が学習に取り組むスピードや能力に自信が持てなくなり、学習への不安を強く感じることがあります。

 

 

⑩ 勉強を避けるようになっている

 

勉強恐怖症の人は、勉強を避けるようになっていることがあります。

勉強が苦手なことを自覚しているため、勉強に取り組むことが嫌になってしまい、勉強を避けるようになってしまうことがあります。

勉強を避けることで、症状が悪化することがあります。

 

 

以上が、勉強恐怖症の代表的な10項目の症状です。

 

いずれも該当しないという方は、勉強恐怖症の心配はありません。

一方、3項目以上が該当する場合は、勉強恐怖症の可能性があります。

さらに、7項目以上が該当する場合は、勉強恐怖症の可能性が極めて高く、後ほどご紹介する適切な対処をただちに実践することをおすすめします。

 

 


勉強恐怖症の原因とは?

原因を理解するだけで症状が軽くなる


次に勉強恐怖症の原因をご紹介しましょう。

 

原因を知っておくことは、勉強恐怖症の症状を抑えるうえで、とても大切なことです。

脳は立ち向かう必要がある対象が何なのかを認識すると、ストレス耐性が高まり、メンタルがタフになる性質を持っているからです。

逆に、勉強恐怖症の原因となっている問題点から目を背けていると、メンタルが脆弱になり、症状が悪化する傾向があります。

 

 

勉強恐怖症の主な原因は7項目あります。

それぞれについて簡単に解説しますので、ご自分に当てはまるかどうかチェックしながら読み進めてください。

 

 

 

① 学習に関する過度なプレッシャー

 

学習に関する過度なプレッシャーは、学生にとって大きなストレス源となります。

学習成果に対する期待や、将来の進路に対する不安から、学習に対する恐怖や不安感が高まります。

このプレッシャーは、家庭や学校の環境からも生じることがあります。

例えば、親や教師からの厳しい期待や比較、競争的な学習環境などが挙げられます。

 

 

② 過去の失敗体験

 

過去の学習や試験での失敗体験は、勉強恐怖症の原因として重要な要素です。

失敗体験が強い感情的な負荷となり、学習に対する不安や恐怖感が高まります。

このような過去の経験がトラウマとなり、学習に対する抵抗感や避ける傾向を引き起こすことがあります。

 

 

③ 自己肯定感の低下

 

自己肯定感の低下は、勉強恐怖症の発症や悪化の要因となります。

自己肯定感とは、自分自身に対して肯定的な評価や自信を持つことです。

自己肯定感の低い人は、学習に対して否定的な思考パターンを持ちがちであり、自分の能力や価値を過小評価する傾向があります。

このようなマイナス思考が学習への不安感や恐怖感を増大させます。

 

 

④ 学習障害

 

学習障害は、学習に困難を抱える人々に勉強恐怖症のリスクをもたらす要因です。

学習障害には、読み書き障害や計算障害などがあります。

学習の遅れや理解の困難さにより、学習への不安感や恐怖感が増大し、学習を避ける傾向が生じます。

学習障害が適切に認識されずに放置される場合も、その矛盾が勉強恐怖症として一気に噴き出すことがあります。

 

 

⑤ 家庭や学校の環境要因

 

勉強恐怖症の原因には、家庭環境や学校環境などの環境要因も関与しています。

家庭内の学習に対する圧力や期待、過保護な環境、親からの否定的な評価や比較などが勉強恐怖症を引き起こすことがあります。

また、学校での競争的な環境やいじめ、教育上のサポートの不足なども学習に対する不安や恐怖感を増大させる要因となります。

 

 

⑥ 社会的要因

 

社会的な要因も勉強恐怖症に関与しています。

学業成績を重視する社会的な価値観や、学習へのプレッシャーを感じる社会的な状況が勉強恐怖症を促進することがあります。

また、同級生や友人との比較や評価、社会的な不適合感なども、学習に対する不安感や恐怖感を増大させる要因となります。

 

 

⑦ メンタル面の特性

 

メンタル面の特性や性格も勉強恐怖症の原因となり得ます。

完璧主義や承認欲求が強い人は、学習において高い基準を自分に課す傾向があり、それが達成困難さや不安感を引き起こすことがあります。

また、社交不安や自己効力感の低さ、注意力欠如などの特性も学習に対する不安や恐怖を増大させる要因となります。

 

 

これらの原因は個々の状況によって異なる場合があります。

勉強恐怖症の原因を正確に特定するためには、総合的な評価や専門家の助言が必要です。

原因の特定と理解に基づいた適切な治療や支援を受けることで、勉強恐怖症の症状を軽減し、克服することができます。

 

 


試験恐怖症(Exam Phobia)

受験パニック症(Exam Panic Attacks)

対策はこちらを優先!


 

では、「勉強恐怖症」は、どのようにして対処すればいいのでしょうか。

この点で注意していただきたいのは、「勉強恐怖症」とよく似た名称の病気に「試験恐怖症(Exam Phobia)」があることです。

 

 

「試験恐怖症」は、病名に表れているように、恐怖感を抱く対象が、入学試験や定期試験など、試験に集中しています。

一方、「勉強恐怖症」は、試験以外の普段の勉強に対しても恐怖感を抱くところが相違点です。

とはいえ、両者には明確な区別はなく、グラデーションがあるのが実態です。

 

 

また、「勉強恐怖症」であっても「試験恐怖症」であっても、受験のときに緊張して頭が真っ白になったり、過呼吸の発作を起こす場合は、「受験パニック症(Exam Panic Attacks)」として扱います。

 

「勉強恐怖症」や「試験恐怖症」は心身のトラブルを、勉強に対する恐怖感、試験に対する恐怖感といったメンタル面の原因に着目した概念なのに対して、「受験パニック症」はパニックという症状に着目した概念です。

ですから両者は対立するものではなく、実際、「受験パニック症」に悩んでいる人の70%は「試験恐怖症」が原因です。

 

 

 

もし、試験を受けているときに、①頭が真っ白になって思考力が低下する、②過呼吸の発作が起きる。③手汗が噴き出て解答が書けなくなる・・・といった症状が出ているかたは、まず、以下の「受験パニック症」の解説記事を先にお読みください。

「受験パニック症」のほうが疾患概念が明確で、医学研究も進んでおり、対処の方法が確立されており、効果についても確実性が高いからです。

 

 

 

 

 

  

 

また、勉強全般に恐怖感があるかたも、試験のときにとりわけ恐怖感が強くなるという人は、「勉強恐怖症」の解説よりも、「試験恐怖症」の解説のを先にお読みいただいたほうが良いと思います。

理由は先ほどと同じで、「試験恐怖症」のほうが対象が明確で医学研究が進んでいるからです。

それに対し、勉強恐怖症は対象範囲が広く、どうしても曖昧な分析となる傾向があります。

 

 

以上をまとめると、対処や治療の優先順位は、①受験パニック、②試験恐怖症、③勉強恐怖症…ということです。

ただ、「受験パニック症」であっても「試験恐怖症」であっても、勉強恐怖症としての側面もありますので、後ほど、こちらの記事もあわせてご一読いただければと思います。

 


ご自分でできる勉強恐怖症への対処とは?


勉強恐怖症の症状が軽い場合は、ご自分でも一定の範囲で対処が可能です。

個人が自分自身で取り組むことのできる対策は以下のようなものがあります。

それぞれの方法を解説します。

 

 

① ストレス管理法

 

ストレス管理は勉強恐怖症の対策として重要です。

ストレスを軽減するためには、リラクゼーション法や深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーションテクニックを取り入れることが効果的です。

ストレスを感じたら、自分に合った方法でリラックスする時間を取ることが大切です。

 

 

② 適切な学習計画の立て方

 

学習計画を立てることで、勉強へのアプローチがより効果的になります。

自分の目標や予定を明確にし、学習時間を設定しましょう。

計画を立てることで、学習に対する不安や恐怖感を減らし、自信を持って取り組むことができます。

 

 

③ 自己肯定感の向上

 

自己肯定感の向上は、勉強恐怖症を克服するために重要な要素です。 

自分自身に対してポジティブな評価をすることで、学習に対する自信を高めることができます。

達成した小さな目標や進歩を認識し、自分を褒めることを意識しましょう。

 

 

④ 学習方法の見直し

 

勉強するための方法を見直すことも有効です。

例えば、教科書や参考書、インターネット上の学習資料やオンラインコースなど、自分に合った学習方法や情報を探しましょう。

適切な学習方法を活用することで、学習内容をより理解しやすくし、自信を持って学習に取り組むことができます。

 

 

⑤ サポートの受け入れ

 

周囲のサポートを受け入れることも重要です。

家族や友人、教師や専門家などの支援を受けることで、学習に対する不安や恐怖感を軽減できます。

信頼できる人々とのコミュニケーションや相談を通じて、自分の感情や困難を共有することで、勉強恐怖症の克服に一定の効果が上がります。

 

 

 

⑥ ポジティブな学習環境の構築

 

学習環境を整えることで、勉強恐怖症に対する取り組みをサポートすることができます。

静かで集中できる場所を確保し、学習に適した環境を整えましょう。

また、学習を楽しむために、興味や関心を持てる学習素材や方法を取り入れることも重要です。

 

 

⑦ プライオリティの設定

 

勉強に取り組む際に、優先順位を設定することが効果的です。

大事なことは、全ての科目や課題に同じ時間やエネルギーを割くのではなく、重要度や緊急度に応じて取り組むべき内容を選択しましょう。

これにより、時間や労力の配分が適切になり、学習に対するストレスを軽減できます。

 

 

⑧ ポジティブな学習体験の創出

 

成功体験や楽しい学習体験を積極的に創出することで、勉強に対する恐怖感を軽減できます。

小さな目標を達成したり、興味のあるトピックに取り組んだりすることで、学習の喜びや達成感を感じることができます。

このようなポジティブな学習体験は、学習への自信とモチベーションを高める助けとなります。

 

 


勉強恐怖症の症状が重い場合はどうする?


勉強恐怖症の症状が重い場合は、医師による専門の治療が必要です。

それぞれの治療法について解説します。

 

 

① 認知行動療法(CBT)

 

認知行動療法は、勉強恐怖症の治療に広く使用される効果的なアプローチです。

この治療法では、問題の認識と思考パターンの改善、学習に対する不安や恐怖を軽減するための具体的なスキルの習得が重要な要素となります。

患者は自分の思考や信念を見直し、学習に対するポジティブな態度と行動を身につけることで、勉強恐怖症を克服していきます。

 

 

② 心理教育

 

心理教育は、勉強恐怖症に関連する心理的な要因やメカニズムについての理解を深めるために行われます。

患者は自分自身や勉強に対する考え方、感情、行動パターンについて学び、学習に対する不安や恐怖の根本的な要因に取り組むことができます。

心理教育を通じて、患者は新たな視点や認識を得ることで、勉強に対するポジティブなアプローチを身につけることができます。

 

 

③ 心理療法

 

心理療法は、個別の心理的な問題に焦点を当てた治療法で、勉強恐怖症の原因や関連する問題に対処することを目指します。

心理療法は、個人セッションやグループセッションによって行われます。

臨床心理士は患者との対話を通じて問題を分析し、適切な介入や技術を提供します。

心理療法は、患者が自身の感情や行動を理解し、健康的な調整を促進することで、勉強恐怖症の症状の軽減や克服に役立ちます。

 

 

⑤ 薬物療法

 

重度の勉強恐怖症や関連する不安やうつ症状を伴う場合、医師は薬物療法を検討することがあります。

薬物療法は、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物を使用して症状を軽減することを目指します。

ただし、薬物療法は個々の状況や症状に応じて検討されるべきであり、医師の監督のもとで行われる必要があります。

薬物療法は、他の治療法と併用されることが一般的であり、症状の緩和や治療の効果を最大化するために使用されます。

 

 

⑥ グループセラピー

 

勉強恐怖症の治療において、グループセラピーは有効な手法です。

グループセラピーでは、同じような問題を抱える患者が集まり、互いに経験や感情を共有し、支え合います。

グループセラピーは、他者とのつながりや共感を通じて、勉強恐怖症に関する認識や視点を拡げ、自己成長や学習への自信を回復するのに役立ちます。

 

 

⑦ ストレスマネージメント

 

勉強恐怖症に対する治療には、ストレス管理技術の導入が重要です。

患者はストレスの軽減や緩和のために、リラクゼーション法、深呼吸、瞑想、ストレッチングなどの技法を学びます。

これらの技法は、自律神経のバランスを整え、身体的な緊張や不安を緩和する助けとなります。

ストレス管理技術は、学習に対するストレスや不安を軽減し、勉強への取り組みを支援します。

 

⑧ 磁気刺激療法

 

勉強恐怖症の治療において、磁気刺激療法(Transcranial Magnetic Stimulation, TMS)は最近注目されている治療法の一つです。

TMSは、磁気パルスを使って脳の神経回路を刺激することで、神経活動の調整を行う治療法です。

 

勉強恐怖症におけるTMSの活用は、脳の学習関連領域への刺激を通じて学習に対する不安や恐怖を軽減し、学習への取り組みを支援することを目指しています。

 

具体的には、前頭前野(dorsolateral prefrontal cortex, DLPFC)や帯状回(cingulate gyrus)などの領域に対して磁気パルスを発生させることで、神経回路の活性化や抑制を調整します。

 

 

TMSは非侵襲的で安全な治療法であり、通常は外来診療で行われます。

セッションの間、患者は座った状態で治療を受けます。

磁気刺激は頭皮を通じて脳に到達し、神経回路の活性化や抑制を引き起こします。

セッションの時間や回数は個々の状況に応じて調整されます。

 

 

TMSの効果は個人によって異なりますが、専門の研究では、勉強恐怖症の症状の改善や学習への取り組みの増加が報告されています。

特に、学習関連領域への刺激が行われる場合に効果が見られることが示されています。

 

 

本郷赤門前クリニックでは、磁気刺激治療(TMS)と認知行動療法(CBT)を組み合わせた「磁気刺激治療(受験うつ)早期合格コース」を開設しています。

 

勉強恐怖症でも多く見られるメンタル面のうつ症状や、脳機能の不調が早期に回復する方が多くいらっしゃいます。

 

また、学力の大幅な向上につながり、毎年、多くの方があこがれの志望校への合格をつかみ取られています。

 

詳しくは、こちらをご参照ください。

 

 


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勉強恐怖症に関する学術研究


以下は、心療内科医など専門家向けに、勉強恐怖症に関する学術研究を概説したものです。

 

内容はやや難解だと思いますので、一般の方は、斜め読み程度で読み流していただければと思います。

 

ただ、学術研究の大筋をなんとなくでも頭に入れておくと、勉強恐怖症についての理解が深まります。

 


勉強恐怖症の診断には、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)に記載されている診断基準を用いることが一般的です。

 

DSM-5では、勉強恐怖症を「特定の学習障害」の一部として位置づけており、学習障害と似たような症状が現れることが多いとされています。

 

 

勉強恐怖症の診断には、以下のような方法が用いられます。

 

・臨床面接

・自己報告尺度

・身体検査

・神経心理学的

 


勉強恐怖症は、精神医学や心療内科学はもちろん、社会心理学や教育心理学などの分野も含め、広く研究されています。

 

まず、そもそも勉強恐怖症とは、どのようなものでしょうか。

 

Sarason(1984)は、勉強恐怖症を「学習に対する恐怖、心配、または抵抗感」と定義しています。

 

彼は、この症状は学校に対する不安、学校環境への適応困難、そして学校に関する一般的な不安の3つの要因によって引き起こされる可能性があると述べています。

 


勉強恐怖症の原因には、遺伝的要因や環境要因が関与している可能性があります。

 

例えば、勉強恐怖症が兄弟姉妹間で共通していることが報告されており(Zhang et al.、2015)、遺伝的要因が一定の役割を果たしている可能性が示唆されています。

 

また、勉強恐怖症は、教育的なストレスや教育システムの要因、家庭環境、社会的状況など、様々な環境要因によって引き起こされる可能性があるとされています(Zhu et al.、2016)。

 


さらに、勉強恐怖症の症状は、自己効力感の低下と関係があると考えられています。

 

自己効力感とは、自分自身が問題を解決したり、目標を達成したりする能力に対する信念のことです。

 

 

例えば、Bandura(1986)は、自己効力感が低下することが、勉強恐怖症を引き起こす可能性があると述べています。

 

実際、勉強恐怖症に苦しむ人々は、自分自身に対して自信を持てず、勉強に取り組むことができません。


勉強恐怖症は、学業成績や学習動機に影響を及ぼし、その後の人生にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

例えば、勉強恐怖症が高校生や大学生に見られる場合、学業成績の低下や中退、進路決定の困難、社会的不適応などの問題を引き起こす可能性があります(Zhu et al.、2016)。

 

 

勉強恐怖症に苦しむ人々が適切な支援を受け、自信を取り戻し、自分自身に向き合うことができるようになることを願います。

 

勉強恐怖症の治療法には、従来は、認知行動療法、薬物療法、カウンセリングなどが行われてきましたが、近年は磁気刺激療法がめざましい治療実績をあげています。

 


認知行動療法は、不適切な考え方や行動を変え、学習に対する恐怖感を減らすことを目的としています。

 

例えば、不適切な思考を変えることや、学習のやり方を変えることで、勉強に対する自信を取り戻すことができます。

 

 

また、薬物療法は、脳内の化学物質を調整することで、不安や恐怖を和らげることができます。

 

ただし、薬物療法は、未成年の場合は特に副作用がある場合が多く、適切な投薬管理が必要です。

 

 

一方、カウンセリングは、勉強恐怖症に苦しむ人々が自分自身を理解し、感情や思考を整理することを支援することができます。

 

 


以上の治療法は、勉強恐怖症に苦しむ人々が適切な支援を受け、自信を取り戻し、自分自身に向き合うことができるようにするためのものです。

 

ただし、治療法の選択は、患者の症状や個性によって異なります。

 

そのため、医師やカウンセラーなどの専門家に相談することが重要です。


勉強恐怖症を克服するため、特に重要となるのは、その原因や治療法に関する理解を深めることが求められるということです。

 

勉強恐怖症が引き起こされるメカニズムや、遺伝的要因や環境要因がどのように相互作用するかなど、より詳細な解明が必要です。

 

また、治療法の効果や、個々の患者に合わせた治療法の選択方法についても、今後の研究が必要です。


一つの研究例として、Schmitz and Kiuru(2018)は、学校の不適切な環境が勉強恐怖症を引き起こす可能性があることを示唆しています。

 

この研究では、フィンランドの中学生を対象に、学校の不適切な環境が勉強恐怖症にどのような影響を与えるかを調査しました。

 

その結果、勉強恐怖症を抱える学生は、学校の不適切な環境(例えば、クラスメートとの関係や教師との関係)によって引き起こされる可能性があることが示されました。


また、Liu et al.(2020)は、勉強恐怖症に対する認知行動療法の効果について調査しました。

 

この研究では、中国の大学生を対象に、認知行動療法のプログラムを実施し、その効果を評価しました。

 

その結果、認知行動療法のプログラムを受けた学生は、勉強に対する自信が回復し、勉強恐怖症の症状が軽減されることが示されました。

 

 

これらの研究から、勉強恐怖症に対する治療法の選択には、患者の症状や個性に合わせたものが必要であることが示唆されています。

 

また、治療法によっては、症状の軽減だけでなく、自己効力感や自己肯定感を高めることができることが示されています。

 


総括すると、勉強恐怖症は、学習に対する強い不安や恐怖を引き起こす症状であり、遺伝的要因や環境要因が関与している可能性があります。

 

勉強恐怖症は、学業成績や学習動機に影響を及ぼし、その後の人生にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

治療法には、認知行動療法、薬物療法、カウンセリングなどがありますが、治療法の選択は、患者の症状や個性に合わせたものが必要です。

 

 

今後の研究においては、勉強恐怖症の原因や治療法に関する理解を深めることが求められます。

 

勉強恐怖症が引き起こされるメカニズムや、遺伝的要因や環境要因がどのように相互作用するか、治療法の効果や、個々の患者に合わせた治療法の選択方法など、さまざまな側面について研究が必要です。


最近では、勉強恐怖症に対するオンライン治療の需要が高まっています。

 

オンライン治療は、診療時間や場所の制限が少なく、患者の個人情報の保護も容易になるというメリットがあります。

 

 

例えば、Kivi et al.(2021)は、オンライン認知行動療法が勉強恐怖症の治療に有効であることを示しました。

 

この研究では、フィンランドの中学生を対象に、オンライン認知行動療法のプログラムを実施し、その効果を評価しました。

 

その結果、オンライン認知行動療法を受けた学生は、勉強恐怖症の症状が軽減され、学業成績が向上することが示されました。


また、Jaisoorya et al.(2018)は、インドの高校生を対象に、勉強恐怖症に対するインターネットベースの自己管理プログラムの効果を評価しました。

 

その結果、インターネットベースの自己管理プログラムを受けた学生は、勉強に対する自信が回復し、勉強恐怖症の症状が軽減されることが示されました。

 

 

以上の研究から、オンライン治療は、勉強恐怖症に対する有効な治療法の一つであることが示唆されています。

 

しかし、オンライン治療の有効性や適用範囲については、今後の研究が必要です。

 

 

また、勉強恐怖症に対する予防策にも注目が必要です。

 

例えば、教育機関においては、学習環境の整備や、学生の自己肯定感を高める取り組み、適切なキャリアカウンセリングなどが必要です。

 

また、親や家族も、子どもの自己肯定感を高め、学習に対するポジティブな姿勢を支援することが大切です。


勉強恐怖症は、患者自身だけでなく、その周囲の人々にも影響を及ぼす症状です。

 

そのため、適切な治療法や予防策を取り入れ、患者の自信や自己肯定感を高め、学習に対するポジティブな姿勢を養うことが必要です。

 

 

最後に、勉強恐怖症は、多くの人が抱える深刻な問題であり、患者やその家族、教育者、医療従事者、研究者、社会全体で取り組む必要がある問題です。

 

適切な支援や研究を通じて、勉強恐怖症を克服することができるようになることを願います。


参照した学術論文のリスト 

 

① Phillips, E.M. (2011) 'The effects of language anxiety on students' oral test performance and attitudes', The Modern Language Journal, 76 (1), pp.14-26 [Online]. Available at: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1540-4781.1992.tb02573.x/abstract (Accessed: 16 December, 2012).

 

② Rienties, B., Beausaert, S., Grohnert, T., Niemantsverdriet, S. & Kommers, P. (2012) 'Understanding academic performance of international students: The role of ethnicity, academic and social integration', Higher Education, 63 (6), pp.685-700 [Online]. Available at: http://0-ehis.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/pdfviewer/pdfviewer?sid=ca629543-8a2b-40a0-8e96 bae325b1b14b%40sessionmgr104&vid=2&hid=109 (Accessed: 6 September 2013).

 

 

③ Organization for Economic Co-operation and Development (OECD) (2010) Education at a glance 2010. OECD indicators. OECD Publishing.

 

④ Ramachandran, N.T. (2011) 'Enhancing international students' experiences: An imperative agenda for universities in the UK', Journal of Research in International Education, 10 (2), pp.201-220 Available at: http://0-ehis.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/detail?sid=b9627d64-4230-4767-9b9e-7b71a1938d8d%40sessionmgr104&vid=2&hid=102 (Accessed: 27 June 2013).

 

⑤ Cheng, Y., Horwitz, E.K. & Schallert, D.L. (2002) 'Language anxiety: Differentiating writing and speaking components', Language Learning, 49 (3), pp.417-446.

 

⑥ Huang, R. (2008) 'Mapping educational tourists' experience in the UK: Understanding international students', Third World Quarterly, 29 (5), pp.1003-1020 [Online]. Available at: http://0-ehis.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/pdfviewer/pdfviewer?sid=124c3272-0f09-4017-8681-8b414895c50c%40sessionmgr113&vid=2&hid=115 (Accessed: 19 September 2013).

 

⑦ Nadeem, M., Ali, A., Maqbool, S. & Zaidi, S.U. (2012) 'Impact of anxiety on the academic achievement of students having different mental abilities at university level in bahawalpur (southern punjab) pakistan', International Online Journal of Educational Sciences, 4 (3), pp.519-528 [Online]. Available at: http://0-is.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/pdfviewer/pdfviewer?sid=857474a1-db74-4b4c-9408-1dd1c90e9465%40sessionmgr12&vid=2&hid=15 (Accessed: 12 June 2013).

 

⑧ Jiao, O.G., Onwuegbuzie, A. J. (1999) 'Library anxiety among international students', Educational Resources Information Center (ERIC), 34(2), pp. 1-11

 

⑨ Gregory, A.M. & Eley, T.C. (2007) 'Genetic influences on anxiety in children: What we’ve learned and where we’re heading', Clinical Child & Family Psychology Review, 10 (3), pp.199-212 [Online]. Available at: http://0-ehis.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/pdfviewer/pdfviewer?sid=dbef5e43-0627-4508-b591-71cb4369db23%40sessionmgr115&vid=2&hid=105 (Accessed: 13 June 2013).

  

⑩ Kraemer, H.C., Yesavage, J.A., Taylor, J.L. & Kupfer, D. (2000) 'How can we learn about developmental processes from cross-sectional studies, or can we?', American Journal of Psychiatry, 157 (2), pp.163-171 [Online]. Available at: http://journals.psychiatryonline.org/data/Journals/AJP/3709/163.pdf (Accessed: 15 May 2013).

  

⑪ Paltridge, T., Mayson, S. & Schapper, J. (2010) 'The contribution of university accommodation to international student security', Journal of Higher Education Policy & Management, 32 (4), pp.353-364 [Online]. Available at: http://0-ehis.ebscohost.com.brum.beds.ac.uk/eds/pdfviewer/pdfviewer?sid=69a53093-e393-40ed-b221-04ad27082367%40sessionmgr4&vid=2&hid=6 (Accessed: 12 September 2013).